トラッククレーンと積載形トラッククレーンの機能と構造、車両選びのポイント、必要な免許まで徹底解説

トラッククレーン外観

1. はじめに:クレーンとトラック、2つの機能を持つ移動式クレーン

現代の建設現場や物流、インフラ整備において、トラッククレーンは不可欠な存在です。その最大の特徴は、重量物を吊り上げるパワフルな「クレーン機能」と、公道を自走できる高い「移動能力」を両立させている点にあります。

この組み合わせによる汎用性は高く、都市部の建築・建設現場から土木工事まで、多種多様な現場で活躍しています。例えば、建築資材の荷揚げ・荷下ろし、高所への資材搬入、インフラ工事の現場では橋梁の架設や送電線のメンテナンスなど、精密な位置決めが求められる作業で活躍しています。災害復旧の現場でがれき撤去のために運用される例もあります。

このように、トラッククレーンは社会の基盤を支える様々なシーンに汎用できるため、「汎用クレーン」と呼ばれることもあります。

2. トラッククレーンの基本構造は運転席が2つあること

トラッククレーンは、その名の通り、貨物運搬の「トラック」と荷物吊り上げの「クレーン」という2つの機能を有した「移動式クレーン」の一種です。その構造における最大の特徴は、走行用とクレーン操作用の機能が完全に分離され、それぞれに運転室がある点です。

車台(シャーシ)をベースにクレーン装置を架装した作りになっていますが、主要コンポーネントは以下の2つとなります。

  • 下部走行体(トラックシャーシ):公道を走行するためのトラック部分。走行用運転室が備わっています。
  • 上部旋回体(クレーン装置):荷物を吊り上げるためのブームやウインチ、旋回機構を持つ部分。クレーン操作専用の運転室がここに設置されています。
トラッククレーンの構造図

走行用の運転室は長距離移動の快適性と安全性を追求し、クレーン操作用の運転室は荷揚げ・荷下ろし作業中の視認性や精密な操作性を最大限に高めるよう最適化されています。

3. 【徹底比較】ラフテレーンクレーンやオールテレーンクレーンとの違い

トラッククレーンを語る上で、しばしば混同されるのが「ラフテレーンクレーン」と「オールテレーンクレーン」です。これらは同じ移動式クレーンでありながら、基本設計や得意とする現場が全く異なります。現場に合わせた機種選定を行うために、その違いを解説します。

3.1 構造と走行性能でみる「ラフテレーンクレーン」との違い

ラフテレーンクレーンの構造図

トラッククレーンの運転室が2つある「2キャブ方式」に対し、走行とクレーン操作を1つの運転室で行う「1キャブ方式」がラフテレーンクレーン最大の特徴です。

この「1キャブ方式」により、現場内での車両移動や吊り上げ作業が迅速に行えます。また、ラフテレーンクレーンは、大型・幅広のタイヤと四輪駆動・四輪操舵システムを備えているため機動性に優れ、舗装されていない軟弱な地盤での作業を得意とするクレーンです。

ただし、ラフテレーンクレーンは構造上、速度制限があり、高速道路が走行できません。一方、トラッククレーンはトラック車台がベースであるため高速道路の走行が可能であり、作業現場までの長距離移動という点に優位性があります。

相違点をまとめると「トラッククレーンは運転室が2つ、長距離移動と安定した地盤での作業が得意」、「ラフテレーンクレーンは運転室が1つ、近距離で機動性を発揮し不整地や狭い現場での作業が得意」と言えます。

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3.2 構造と走行性能でみる「オールテレーンクレーン」との違い

オールテレーンクレーンの構造図

オールテレーンクレーンは、トラッククレーンと同様、運転室が走行用とクレーン操作用に分かれた「2キャブ方式」という構造です。

走行性能については、トラッククレーンのように高速道路を走行できる長距離移動性能と、ラフテレーンクレーンのような四輪操舵システムによる不整地走破性を兼ね備えており、その名前通り「全地形」対応の移動式クレーンです。

吊り上げ能力も100tを超える大型モデルが多く、非常に高性能ですが、その分車両価格や維持コストが高くなる傾向にあります。

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4. トラッククレーンと積載形トラッククレーンの違い、ユニッククレーンやカーゴクレーンなど様々な呼称がある理由

積載形トラッククレーンの構造図

トラッククレーンに属するその他の種類として、トラックのキャブ(運転室)と荷台の間に積み降ろし用のクレーン装置を備えた「積載形(積載型)トラッククレーン」があります。トラッククレーンの運転室が走行用とクレーン操作用に分かれて2つあるのに対し、積載形トラッククレーンの運転室は走行用の1つのみで、クレーン操作は車体横などから行います。

積載形トラッククレーンは多様な呼び方があり、搭載形(搭載型)クレーン、車両積載形クレーンまたは車両搭載形クレーン、クレーン付トラック、トラック搭載型クレーンなどとも言われております。

【各協会での呼び方の違い】
日本クレーン協会:https://cranenet.or.jp/tisiki/idou.html
日本建設機械工業会:https://www.cema.or.jp/general/industry/machines/truckmountedcranes.html

さらに、古河ユニック株式会社の車両は「ユニッククレーン」、株式会社タダノの車両は「カーゴクレーン」と呼ばれるなどメーカーによっても呼び名が異なります。これはメーカーの商品名だったものが広く認知され、積載形クレーンの通称として一般的にも使われるようになったためです。

呼称は多々ありますが、機能としては同じ車両を指しています。トラック荷台への「積み降ろし」と「資材運搬」の2役を1台でこなせる利便性の高さが特徴で、建設現場での資材搬入等で活躍しています。

5. 積載形トラッククレーンのクラス分けと作業効率をアップさせる車両の選び方

トラッククレーンのクラス分けは主に、ベースとなるトラックの積載量(2t車、4t車など)と、クレーン自体の「最大吊り上げ荷重」によって決まります。

最適な車両クラスを選定することが、安全かつ効率的な作業の第一歩となります。そのために大事なのは、「現場の規模、搬入経路、吊り荷重量」などの総合的判断です。

例えば、積載形トラッククレーンは荷物を現場まで運搬した後、トラック荷台から直接指定の階や設置場所へ吊り上げて搬入できるため、積み下ろしのために別のクレーン車やフォークリフトを手配する必要がなく、作業工程を短縮できます。ただし、荷物の大きさ、重さに対し、荷台が小さすぎる車両を選んだ場合は、運搬回数や荷役回数を増やす必要があり時間効率が逆に落ちてしまいます。

これを踏まえ、作業のスピードアップを実現するために、一般的な積載形トラッククレーンのクラスごとの特徴と用途を以下の表にまとめましたので、参考にしてください。

【積載形トラッククレーン クラス別一覧表】

クラス 小型 中型 大型
ベース車両 2~3.5t 4~8t 8t~15t未満
車両総重量
(目安)
5~8t 8~20t 20t~25t未満
最大吊上げ荷重(目安) 2.93t未満 2.93tクラスが一般的 2.93t~4.9t
特徴 車両がコンパクトで小回りが利く パワーと機動性のバランスが良く、近距離から長距離までの運搬をこなす 長距離輸送能力と高い吊り上げ能力を兼ね備える
主な用途 住宅密集地、狭隘地での作業、造園作業や小規模な資材運搬 戸建て住宅から小規模ビル建設、一般的な水道工事、土木作業まで幅広い現場 大規模建築、橋梁工事、鉄骨やコンクリートなど重量物運搬

6. トラッククレーンの運転・操作に必要な免許・資格一覧

トラッククレーンの運用には「公道を走行するための運転免許」と「クレーンを操作するための資格」という、2つの異なる法律に基づいた免許と資格が必要です。両方を取得しなければ業務に従事することはできません。

6.1 公道走行に必要な運転免許

トラッククレーンを運転して公道を走行するためには、道路交通法に基づき、その車両の「車両総重量」に応じた運転免許が必要です。免許制度は過去に複数回改正されており、取得した時期によって運転できる範囲が異なるため注意が必要です。

【車両別の免許一覧表】

準中型免許
(5t限定)
準中型免許 中型免許
(8t限定)
中型免許 大型免許
車両総重量 5t未満 3.5t以上
7.5t未満
8t未満 7.5t以上
11t未満
11t以上

※平成19年6月1日以前に普通免許を取得した方は「中型免許(8t限定)」、平成19年6月2日~平成29年3月11日に取得した方は「準中型免許(5t限定)」となります。
国土交通省:https://wwwtb.mlit.go.jp/kyushu/content/000016335.pdf

6.2 クレーン操作に必要な資格

クレーン部分を操作するには、労働安全衛生法に基づき、そのクレーンの「吊り上げ荷重」に応じた資格が必要です。

【吊り上げ荷重別の資格一覧表】

吊り上げ荷重 1t未満 1t以上 5t未満 5t以上
必要な資格 移動式クレーンの運転の業務に係る特別教育 小型移動式クレーン運転技能講習 移動式クレーン運転士免許
取得方法 事業者が実施する安全衛生に関する教育を修了 都道府県労働局長登録教習機関での講習を修了 国の指定試験機関が実施する学科・実技試験に合格

6.3 安全作業に不可欠な「玉掛け」資格

クレーン作業において、荷物をクレーンのフックに掛けたり外したりする作業を「玉掛け」と呼びます。この作業はクレーン操作と一体不可分であり、極めて高い安全性が求められるため、専門の資格が必要です。オペレーター自身が玉掛けを行うケースも多いため、クレーン操作資格とセットで取得することが一般的です。

  • 吊り上げ荷重1t以上の場合:玉掛け技能講習の修了が必要
  • 吊り上げ荷重1t未満の場合:玉掛け業務の特別教育の修了が必要

関連記事はこちら: ラフテレーンクレーンの作業に必要な免許と資格

7. 安全作業に重要な「アウトリガー」と「敷板」の関係

トラッククレーンの性能や免許について理解を深めたところで、最も重要なテーマである「安全」に焦点を当てます。クレーン作業の安全は、「アウトリガー」とその性能を100%引き出す「敷板」にかかっていると言えます。

7.1 転倒事故を防ぐアウトリガーの役割と法的義務

アウトリガーは、車体から左右に張り出して地面に接地させることで、クレーン作業時の車両の安定性を確保し、転倒を防止するための極めて重要な安全装置です。

このアウトリガーの使用は、単なる推奨事項ではありません。「クレーン等安全規則 第七十条の五」において、事業者は作業時にアウトリガーを「最大限に張り出さなければならない」と明確に定められています。張り出しが不十分な場合は安定性が大きく低下し、定格荷重内であっても転倒する危険性が高まるためです。

積載形トラッククレーンのアウトリガーには主に以下の3種類があります。

差し違いアウトリガー: 張り出しシリンダーが長く、左右のアームを横方向に大きく張り出せるタイプ

差し違いアウトリガーの図

リヤアウトリガー: 車両の前方2か所と後方2か所にアウトリガーが搭載されているタイプ

リヤアウトリガーの図

ハイアウトリガー: 車体前方を高く持ち上げ、荷台を後方に向けて適切な角度に傾斜させることが可能なタイプ

ハイアウトリガーの図

いずれのタイプのアウトリガーも、クレーンの性能(定格荷重)は、アウトリガーを最大に張り出した状態を前提に計算されています。適切な張り出し幅を確保し、安全に使用しましょう。

関連記事はこちら: クレーン作業の重要ポイント 「アウトリガー」の基本と種類

7.2 アウトリガーの性能を最大限に引き出す「敷板」の必要性

アウトリガーを最大限に張り出しても、その下の地盤が軟弱であれば意味がありません。アウトリガーの先端(フロート)には、吊り荷と車両の重量が集中し、非常に高い圧力がかかります。この圧力が地盤の支持力を超えると、アウトリガーが地面にめり込み、車体が傾き、結果として転倒事故につながります。

そのために必要となるのが「アウトリガー用敷板(アウトリガーベース、ジャッキベース)」です。敷板の役割は、アウトリガーの先端にかかる集中荷重をより広い面積に分散させ、接地圧を低下させることで、地盤沈下を防ぎ、車両の安定性を確保することにあります。

関連記事はこちら: なぜアウトリガー使用時の敷板設置は「義務」なのか?クレーン等安全規則の内容を徹底解説

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アウトリガーと敷板の使用例

敷板サイズの選び方については、フロートやジャッキの大きさとそこに加えられる荷重、最大反力がポイントとなります。敷板サイズの目安として、以下を参考にしてください。

【積載形クレーン車両総重量と敷板サイズの目安一覧表】

車両総重量 5t未満 8t未満 15t未満 25t未満
敷板サイズmm
(敷板重量/耐荷重)
350x350x40
(4.7kg/8t)
355x355x40
(4.7kg/8t)
または
355x355x55
(6.5kg/13t)
400x400x40
(6.3kg/12t)
または
450x450x40
(7.7kg/14t)
450x450x40
(7.7kg/14t)
または
500x500x40
(9.7kg/15t)

*地盤の固さも考慮して適切にご選択ください

*ハイアウトリガーには安全のため一回り大きな敷板を選択する事例が多いです

サイズと用途でアウトリガー敷板を選ぶ

8. まとめ:トラッククレーンの能力を最大限に引き出すために

本記事では、トラッククレーンの基本構造から、他の移動式クレーンとの違い、サイズ、安全作業、そして複雑な免許制度に至るまで、クレーンによる業務に関わる方々が知っておくべき知識を解説してきました。

トラッククレーンは、その高い機動力と汎用性で多くの現場を支える重要な重機です。

その運用に必要な資格や免許、アウトリガーの設置方法などを正しく理解し、安全確実な作業を心がけてください。